(50代以上の約70%が保有する)ピロリ菌とは?
胃がんは日本では肺がんに次いで2番目の死病率の高いがんです。胃がんはピロリ菌と深い関係があり、胃がんの98パーセントはピロリ菌感染によるものとされています。1,500人ほどを対象とした大規模試験で、ピロリ菌感染者は10年間の期間で2.9パーセントの人に胃がんが見つかったのに対し、ピロリ菌非感染者からは10年間で胃がん発生者は一人もいなかったというデータがあります。日本人では年齢パーセントほどの方がピロリ菌陽性であるとされており、50代の方で2人に1人がピロリ菌に感染しているという割合であることを考えると、ピロリ菌が非常に身近な存在だということが窺い知れます。胃がんはもちろん早期発見・早期治療が大切ですが、ピロリ菌除去菌という非常に有効な予防手段を講じることができるタイプのがんです。当クリニック院長は日本消化器病学会専門医・日本消化器内視鏡学会専門医として、これまで多くの胃がん患者様に向き合ってまいりました。ご縁があって名古屋市緑区に開業して以来、「この地の胃がんで苦しむ患者様を減らしたい」という思いを胸に、そのお役に立てるよう日々真剣に取り組んでいます。
胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍とピロリ菌の関係
最近までの研究で、慢性胃炎のほとんどがピロリ菌によって引き起こされていることがわかっており、慢性胃炎の方は胃がんが発生しやすいことが判明しています。また胃潰瘍や十二指腸潰瘍を起こした方で胃にピロリ菌がいる場合、ピロリ菌を除菌しなければ1年以内に病気が再発する可能性が非常に高くなっています。潰瘍といっても明確な症状があるわけではなく、実際に潰瘍ができていても気づかず、知らないうちに治っている方もいることを考えると、実際には100%に近い方が再発しているのではないかと思われることから、胃潰瘍や十二指腸潰とピロリ菌とはがん以上に密接に繋がっているといえます。消化器内科の医師の視点から見ると、胃潰瘍・十二指腸潰瘍をお持ちの方でピロリ菌の除菌治療をしないということは考えられないというのが正直な考えです。
ピロリ菌の除菌方法
細菌であるピロリ菌に対しては、抗生剤の服用で除菌治療を行います。基本は1週間お薬を内服するだけで9割もしくはそれ以上の確率でピロリ菌を殺すことができます。保険診療では2回まで除菌治療を行うことが可能で、一次除菌で除菌が成功しなかった方に対しては、薬の種類を変更して同じように1週間内服し、二次除菌を行います。基本的には二次除菌まででほとんどの方が除菌が成功しますが、ごくまれに二次除菌でも成功しなかった場合、保険診療の適応外にて三次除菌の治療を受けることも可能です。三次除菌も同じ内服治療で、抗生剤の種類が新しい世代の強い薬になります。二次除菌の終了後もまだ胃の中にピロリ菌が残っており、三次除菌を受けない場合は、より慎重に胃がんの早期発見・早期治療に取り組む必要があると思います。
薬服用の際の注意点
ピロリ菌の除菌治療でもっとも大切なことは、抗生剤を決められた用法でしっかり飲むことです。適切な薬の服用をしなければ除菌の成功率が大幅に落ちてしまうため、飲み忘れに注意して、必要な種類と量の薬をきっちりと飲んでいただくようにご説明しています。治療中のアルコールの摂取については、二次除菌で使われるメトロニダゾールという抗生剤がアルコールの分解を阻害するため、特に二次除菌の期間中はお酒は厳禁です。除菌時の副作用として、人によっては軟便・下痢、味覚異常、アレルギーによる発疹や痒みなどが出る場合があります。重篤なアレルギー反応が出た方などは治療を中断するケースもありますが、基本的には生活に支障をきたすような副作用が出る方は少なく、軽い下痢や味覚異常であればそのまま内服を続けていただいて問題ありません。
ピロリ菌除菌の費用
一次除菌、二次除菌ともに現在は保険適用が認められており、患者様に大きな負担がかかることなく、気軽に検査が受けられるようになりました。また、当院では三次除菌治療(こちらは自費診療となります)も行っております。費用の詳細につきましては当院までお問い合わせください。
担当医からのメッセージ
ピロリ菌は、ほとんどが幼児期に感染するといわれています。その感染が元になって慢性胃炎になり、長い年月をかけて胃がんになりやすい胃が作られていくだけでなく、胃にピロリ菌がいる方は胃潰瘍、十二指腸潰瘍も起こりやすくなるため、早い段階でピロリ菌がいるかどうかを確認しておくことはとても大切です。胃カメラの検査がどのようなものかを実際に体験していただき、慢性的に胃がただれていないか、胃がんに対してどの程度のリスクがあるか、胃がんになりやすい何らかの性質を持っていないかを確認することで、その後の検査の進め方も相談の上決めることができます。最終的にすべての患者様に胃がんで苦しむことのない幸せな人生を過ごしていただけるように、できる限りのサポートをさせていただくことが当院の願いです。